~働くこと~

2021年4月

 働く理由をネット検索すると、求人サイトによりますが、大体どこも1位はお金のためとあります。アンケートの取り方にもよると思うのですが、en社では2位が自分の能力・人間性を高めるため、3位が仕事を通じて社会に貢献するため、となっています。複数回答のため、仕事はお金のため、とアンケートに回答した人でも、自分の人間性を高め、仕事を通じて社会に貢献できればと考えている人も多いと推察しました。素晴らしい結果と思います。  

翻って私の若い時などは、仕事が人間性を高め、社会に貢献するためなどという発想は露ほどもありませんでした。ただひたすらお金のためです。そして、そのお金は独身の時は、ゴルフ代、飲み代、麻雀の負け金にほとんど費やされていました。結婚したら、今度は家族のため、食べていくためと目的は少し変わりましたが、相変わらず人間性向上や社会貢献という意識を持つことはありませんでした。30代半ばは中間管理職のプレイングマネージャーでバブル景気のせいもあり高給をとっていましたが、つらい日々の連続で結局逃げるように転職しました。今度は平の営業マンでした。その時に思いました。サラリーマンは平社員で給料をたくさんもらうのが一番だと。余談ですが、中間管理職の重圧から解放され、前職で62~63キロであった体重が半年で75キロまで一気に太りました。スーツは全て着られなくなり妻に責められたことを覚えています。つまり中間管理職としてその部門全体の結果責任を負わなければならない立場が、一転、自分の成績のことだけ考えればよい、というとても楽な立場に変わったお陰でした。

 あることがきっかけとなり43歳で独立しました。松下幸之助先生や稲森和夫先生のような高い志があったわけではありませんが、少なくとも、気持よく働ける会社にしたいという思いだけは持っていました。しかし、現実は思い通りにならないことの連続でしたし、今もそうです。サラリーマン時代との一番の違いは当然のことですが、自分の成績のことだけ考えて仕事をしていればよかった立場が、それでは済まなくなったということでした。そんなこと、当たり前じゃないかと皆さんは思われますが、事実私はそれまで、そんなことを考えてもいなかったのです。そして、そこから私の苦しみが始まりました。しかし有難いことに多くの善意のお客様、取引先、社員に支えられ、しかも長年にわたり多くの学びの機会を得、不完全ではありましたが一つ一つ真摯に向き合っていくことで、実はその苦しみが私を救ってくれているということを少しずつですが実感するようになりました。思い通りにならない苦しみの連続こそが、真の喜びとはなんであるかを教えてくれたのでした。真の喜びとお金は無縁のものです。かつてお金のためだけに働いていた私は、今、人間の生きている本当の意味は他者への貢献であると確信しています。本当は誰もが自分が一番大事なのですが、それでも他者への貢献なしに真の幸せを得ることはできないと思います。 人間は生きている限り幸せを求める動物です。それならば死ぬまで働き続けることです。働くことは思い通りにならないことの連続ですが、それを苦しみととらえるのではなく、その苦しみの先にある真の喜び、幸せを信じあまり損得を考えずに、愚直に働くことです。間違ってもお金をためて悠々自適の老後をなどとは考えない方がよいと思います。生きるとは働くこと、働くことが他者への貢献であり、幸せへの唯一の道ではないでしょうか。      感謝合掌