~課題の分離(アドラー)~

2021年1月

今月も、この項で度々取り上げていますアドラー心理学(2014.6月、2018年2月、2018年3月)の考え方について記します。小倉広著「人生に革命が起きる100の言葉」には、「課題の分離」というアドラー独特の解釈がとても分かり易く書かれています。

 多くの親は子供に「もっと勉強しなさい」と子供を叱ります。しかし“勉強する”という課題は誰の課題かと言えば、明らかに子供の課題です。なぜなら勉強しないことによる不利益を被るのは子供自身だからです。多くの親は「子供のためを思って」というも尤もらしい言い訳をしますが、その実態は自分の支配欲を満たしたり、自分の世間体を取り繕うものです。子供は親のその邪心を察知して、勉強すること、支配されることを拒絶するのです。さらに進んで、子供の進学や就職、はては結婚相手、住まいするところについてまでも、親は子供の課題であるにも関わらず、土足で子供の課題に踏み込むのです。

 私は心配します。もし親に対して従順な子供が、親の言う通りに勉強し、本当は自分が行きたい学校があるにもかかわらず、親の言う通りの学校に進学し、本当は職人となって働きたいと思っているのに、親に反対され、親の言う通りの一流企業に就職し、本当は心から好きな人がいるのに、親の言う通りの相手と結婚し、本当は住みたい家や場所があるのに、親の言う通りの場所で家を買ったりして、もしも、その子供が将来、何かしら、ものすごい不幸と感じることがあったとしたら、その子供はきっと親を怨むことになるでしょう。なぜなら、親は子供の課題に踏み込んだからです。「自分の人生を返せ!」と子供は親に言うでしょう。

しかし、また多くの親は支配欲とか世間体とかの邪心ではなく、真心、本心から子供の経済的安定を願って、子供にこのほうがいいよ、このほうが得だよ、とアドバイスします。私にも二人の娘がおりますから、人情としては痛いほどよく分かります。しかし、子供は親の所有物ではありません。全く確固たる別の人格で、その子供自身の人生なのです。経済的に豊かであろうと、貧乏のどん底であろうと、社会的な地位を得ようと、市井の人であろうと、その子供の人生なのです。経済的豊かさや社会的地位と幸せは全く関係ありません。子供から支援を求められない限り、親は子供の人生の課題に踏み込んではいけないと思います。

 人生をどう考えるかは人によってまちまちですが、もし幸福になるために人生があるとしたら、すべてのことに感謝する生き方しかないと思います。全てのことに感謝するのであれば、自分の子供にも感謝するべきです。まず子育てさせてもらったこと、子育てを通して自分自身が成長させてもらったことに感謝すべきです。間違っても、子供が決断し実行しようとすることに対し、支援はしても絶対に反対したり、自分の意見を押し付けたりなどしてはならないし、また、経済的豊かさと幸せがイコールであるという価値観を押し付けてもいけない、と考えています。普通なら子供より先に死んでいく親が、子供の人生に責任を持てるのかと問いたいのです。   “私たちは他人の感情や行動をコントロールすることはできません。できないことをしようとするから苦しいのです。相手の課題に踏み込まず、自分の課題に相手を踏み込ませなければいいのです。・・・・中略・・・「課題の分離」ができるようになったとき。それは幸福な人生への第一歩です。”アルフレッド・アドラー      全てのことに感謝合掌

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