吹付断熱は間違いなく危険~イソシアネートの有毒性~

最近、吹付断熱している家をよく見かけるようになりました。この断熱方法は、自動的に気密施工を行うことになり、一石二鳥でいわゆる高気密・高断熱になります。このことは良いことで何の問題もありません。しかし私はこの断熱方法に少し心配な点があるのを危惧しています。そういう私も実は約10年前に1棟だけ施工したことがあります。その時はまだ吹付断熱がウレタン発砲で、その主原料がイソシアネートであるということを知りませんでした。全く研究不足、努力不足でした。大いに反省しています。

吹付断熱への危惧

初めての断熱材でしたので、施工時に立ち会いました。施工の職人さんは防護服を身に付け防護メガネ防護マスクの完全装備でした。私は思わず職人さんに聞きました「そこまでやらないといけないの?」職人さん「ええ決まりですし、第一、危険ですから」と、こともなげに言われました。たしかに現場発泡する液体が身体に付着したり、目や耳や口に入ったら大変です。その時は、もっともなことだと思い何の疑問も感じませんでしたが、しばらくして、いや待てよ、そんな危険なものを幸せの器である家の中に入れてもいいのかな、との疑問が湧いてきました。多分に情緒的な感情で、科学的に危険であるという裏付けがあるわけではありません。私は化学者ではありません。ただのいち工務店の人間です。したがって私の得る情報は書籍やインターネットからがほとんどです。ネットでイソシアネートと検索すると恐ろしいことがいっぱい出てきます。どうやら処理方法を誤ればかなりの有害物質になるということは間違いないと思います。私は第2のアスベストになりはしないかと心配しています。これが杞憂であることを祈るのみです。

吹付断熱の作業の様子
吹付断熱の作業の様子02

次に下図をご覧ください。

吹き付け断熱の構造材の細部のイラスト図

皆さんは防水型スマホや携帯が内部結露するのをご存知ですか。結露の原因はもちろん水蒸気がその中に侵入しているからです。建築材料に防水透湿シートというものがあり、ほとんどの木造住宅で使用されています。これはその字の通り、先ず防水ですから水は通しません。しかし、透湿ですから水蒸気はバンバンに通します。つまり水は入らなくても、水蒸気は通るのです。理由は簡単です。水と水蒸気とでは、分子の大きさが全然違うのです。ですから、水蒸気は壁紙や石膏ボードを透過してガンガン中に入ります。柱と吹付断熱の間にもスーっと入っていきます。もしそこで結露したらどうなるのでしょうか。恐ろしいことです。壁体内結露の恐ろしさは言うまでもありません。カビが繁殖したり、木材が腐食したりします。一言で言えば“家が腐る”ということです。家が腐ってしまえば、どんなに耐震金物を施工しても、全く意味はありません。地震が来ればひとたまりもありません。


本来の吹付断熱の最大の長所である、断熱と気密を同時に確保するという、そのこと自体が短所となってしまうのです。壁の中に隙間なくギッチリと吹き込んだ断熱材が、隙間がないがために、敢えて、そのすき間に入り込んだ水蒸気が結露となってしまうリスクがあるのです。しかもやっかいなことに、壁内じゅうに隙間がないため、点検のしようがありません。室内側に壁内の点検のための点検口を設置しても、壁の中は動かせない、へばりついた断熱材で充満しています。長い年月の経過とともに、建物にはどんな事態が発生するか分かりません。予測できないようなことが起こるものです。雨漏り、水害による床上浸水があった時どうするのでしょうか。建物の命は壁の中、床下、小屋裏、天井裏と見えないところにあるのです。必ず、その部分が点検できるようにしておかなければなりません。
床下、小屋裏へは人間が割と簡単に入って点検できる状態、そして壁の中、天井裏は点検口を設置して、いつでも見られる状態にしておくのがベストです。間違っても、そこに何かものをギュウギュウに詰め込むことは、将来必ず災いのもとになりうると考えます。
(詰め込んだものが、簡単に動かすことが出来るのであればOKです)

最後にお伝えしたいことは、壁の中いっぱいに吹付断熱したら、木材の持っている香りや調湿機能が大きく損なわれてしまうということです。杉やヒノキの無垢の柱は管柱1本で500ccもの水分を吸ったり吐いたりできると言われています。家全体では、理論上ですが、なんと200ℓもの水分の調湿機能があります。(構造材の種類によります)吹付断熱とは、木材の表面に強力な接着性を持つ化学物質断熱材を吹き付けて、木材が息の出来ない状態にしてしまうのです。これでは木材の調湿機能は限りなくゼロに近づいてしまいます。何のために木造で家を建てているのか、私には理解できません。それともうひとつ、木材は空気、それも僅かにでも動いている空気に触れさせておけば300年でも500年でも、その強度を保ち続けることが出来るのです。吹付断熱された木材の表面は水蒸気が入り込む隙間はあっても、動く空気に触れることはありません。吹付断熱によって、有害物質の揮発のリスクと、木材表面への結露のリスクを抱え、さらには木材の最大の魅力である香りや調湿機能までをも奪ってしまう化学物質のかたまりで覆い隠すということは、高気密・高断熱に名を借りた施主への背信行為と言わざるをえないでしょう。これらのことが杞憂であることを祈るのみです。

吹付断熱の原材料の危険性

吹き付け断熱の内装の様子
吹き付け断熱の作業の様子
吹き付け断熱の内装

最初に「吹付断熱への危惧」を記しました。そして最近、イソシアネート(硬質ウレタンフォームの原料)への警鐘を鳴らし続けているホームページを見つけました。NPO法人VOC研究会のものです。NPO・VOC研究会 VOCとは揮発性有機化合物(常温で大気中に揮発する化学物質)のことです。それによりますと「2013年4月アメリカ国立衛生研究所において3日間“イソシアネートと健康”について欧米各国と日本も参加して議論が行われた。残念なことに欧米は医学、行政、支援技術分野の人々が400人も集まったというのに、日本は市民団体が派遣した医師がたった一人だけであった。・・・中略・・・密閉された地下室の断熱のための発泡ウレタン吹付工事で死亡した例につき『普通なら酸欠で処理されるところを、血液の分析で原因がイソシアネートであることをあきらかにした』・・・中略・・海外の症例としてポリウレタン塗料を初めて使って車の塗装をして、その後まもなく急死した・・・」そのほかにもいろいろな事例が記されています。以下にイソシアネート(吹付断熱材の原料)による症状をまとめた表を添付しておきます。本当に恐ろしい物質です。このようなものに家中が囲まれているのです。しかもそれは半永久にです。

お時間のある方は下のボタンを押して『日本臨床環境医学会』という学会の発表した文献「環境に広がるイソシアネートの有害性」をご一読ください。イソシアネートの恐ろしさが、より詳しく科学的に具体的に証明されています。

イソシアネートが及ぼす体への影響

イソシアネートが体内に入る経路によって症状は大幅に変わります。吸入した場合には、肺胞から血液中に入り、全身の臓器に行き渡ります。嗅覚器、気管支、肺など呼吸器、次いで腎臓、心臓など血管を通り全身に循環します。そうすることで以下の症状が出ます。

  • 発赤、かゆみ、蕁麻疹、
  • 流涙、眼痛、視力低下、結膜炎
  • 過敏性肺臓炎、息切れ、不眠、喘息
  • 頭痛、めまい、嘔吐、運動失調、集中力欠如、人格変化
  • 発がん性

など、様々な症状を引き起こす恐れがあります。

発症例

  • 漆器工場で装置付着物をガスバーナーで取ろうとして気化したイソシアネートの中毒が生じた
  • アスファルト舗装を改造中に舗装材料中から気化したイソシアネートでs業イン全員が咳き込み、内2人は治療が長引いた
  • 熱圧縮ウレタンシートを扱っていた作業員が肺臓炎になった

など

以下は私と同じ危惧を抱いている宮城県の工務店 大東住宅様のホームページです。

身近に潜むイソシアネートの危険

イソシアネートは衣類用の柔軟剤にも含まれています。昨今では香りが長持ちすると謳っているCMをよく見かけるのではないでしょうか。まさにその長持ちさせるために吹き付け断熱と同じ成分のイソシアネートが入っているのです。【マイクロカプセル】といった香りの素をいれたカプセルがイソシアネートでできています。簡単に壊れるそのカプセルが割れることにより、香りが外に出てくるという仕組みなのです。

少し話はそれますが、柔軟剤に入っている「香料」が人体に影響されることが分かってきました。これを【化学物質過敏症】と言います。化学物質の許容範囲は人それぞれですが、それを超えてしまうと咳や頭痛、めまい、しびれ、倦怠感などの健康被害をもたらします。小さな子どもですら、学校の密室の部屋に入ると蕁麻疹などの症状が出て、友達と遊ぶことすら難しい現状もあります。これらの健康被害をなくすためにも、憩いの場所である家で吹き付け断熱を取り入れないことが必要です。

吹き付け断熱の成分が入っている身近なもの

さいごに

近年は世界のCO2削減の流れの中で、わが国も住宅に関しても高断熱・高気密化が当然の帰結として求められています。そのこと自体には私も大賛成です。しかし、気密性と断熱性を安価に短工期で確保できるからといって、このような危険極まりないものを野放しにしているのは大問題です。詳しくは知りませんが、お隣の中国や韓国よりもかなり規制が緩やかと聞いています。(ほとんど規制していないのが実態です)

私は日本人であることを誇りに思っている人間です。しかし個人の健康を無視し、産業界を忖度、保護することに関しては日本のやり方は間違っていると思います。欧米では危険かもしれない段階で規制や禁止をします。日本は危険と証明されない限り規制も禁止もしません。

住まいは幸せの器です。なにも危険かもしれないものを使う必要などありません。

そんなものを使わなくても家は出来ます。高気密・高断熱で安全で快適な家は出来ます。高気密・高断熱を基準に住み心地の良い家づくりを日々考えています。

神戸市で注文住宅の工務店代表の脇長

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文責 健康住宅指導員 脇長 敬冶

平成7年セレクトホーム 設立
◆資格
宅建主任者、2級建築施工管理技士、気密測定技能士
室内空気質環境検査員、防火管理者


平成7年、不動産仲介業から始めました。現在は住み心地を重視した注文建築、リフォームの請負に特化した工務店として事業を展開しております。

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