~夏型結露~

壁体内結露といえば皆さんは冬をイメージする方がほとんどだと思います。しかし、結露の原因が露点温度で決定するという法則は季節を問いません。当然、冬の次は夏に発生するリスクがありますし、実際起こっています。日経ホームビルダー2017年11月号の記事をそのまま掲載します。福岡大学 工学部建築学科 教授 須貝先生のお話をご紹介します。

夏型結露の専門家の見解

『例えば、関東地域での夏型結露被害です。こちらは、2×4工法でグラスウールを充填し、室内側に防湿シートが施工されていた現場ですが、結露による腐食が多く発生しています。冬型結露の場合は、外側の合板に腐食が見えるのですが、この住宅では柱の室内側で腐食していますので典型的な夏型結露による被害だと見ています。壁体内が高温多湿になり、室内側のクーラーで冷やされたため、結露となってしまったと考えられます。ホールダウン金物も白くカビが生えており、このように腐食が進んでしまうと建物の体力に問題が出てきてしまします。』

夏型結露の事例
夏型結露の事例

最も可能性の高い冬型壁体内結露を防止するために推奨されている室内側防湿シート(室内の水蒸気が壁体内に侵入するのを防ぐためのシート)が、今度は外から侵入してきた水蒸気の逃げ場を遮断することに作用し、結果、室内側の石膏ボード、柱、土台、梁の石膏ボードとの接触面に結露を発生せしめるとは誠に皮肉なものです。真夏の外気が温度35℃、相対湿度60%の時の絶対湿度量(1㎥に含まれる水蒸気量)は23.7g、それに対して室内はエアコンをきかせて25度、相対湿度50%とした場合の絶対湿度量は13.8gです。熱も水も必ず高いところから低いほうに移動するのが宇宙の法則です。23.7から13.8のほうへ、つまり屋外から室内へ水蒸気は移動しようとするのです。この場合の露点温度(結露する温度)は約25度ですから結露します。(ただし石膏ボードの外側の表面温度が室温とイコールという前提です)しかし室温を26℃以上に上げれば結露しません。このように夏場、エアコンをギンギンに効かせて温度を極端に下げる(24度以下)と夏型結露の発生リスクは一気に上がります。これを防ぐ方法は以下が考えられます。

夏型結露を防ぐ方法

①エアコンの温度を26℃以上にする。
②推奨されているが室内防湿シートを施工しない。(ただし冬型壁体内結露リスクは高い。)
③透湿抵抗の高い断熱材、面材を柱の外側に施工する。(外断熱にする)

透湿抵抗の高い断熱材として発泡系板状断熱材が有効です。繊維状断熱材のグラスウール、ロックウール、セルロースファイバーの30倍から40倍の透湿抵抗があります。それも壁内に施工するよりも柱の外に施工し、断熱材と断熱材の継ぎ目には気密テープを張ることにより、外部の水蒸気の進入を圧倒的に防ぐことが出来ます。