~台風~

先の台風15号で千葉県のゴルフ練習場の鉄柱が倒れ、民家に被害が及んだニュースは、皆さんも何度もテレビで目にされたことと思います。住宅会社の社長として瓦のめくれた家もそうですが、あのように鉄柱が屋根を突き破り小屋組みが破壊された映像を見るのは、本当に心が痛みます。あの状態で雨が降ってきたらどうなるのか。想像するだけでも気持ちが暗くなります。ニュースを見ているかぎりでは、ゴルフ練習場のオーナーは自然災害なので自分には復旧義務は無いと言っているそうです。法律的にはそうなのかもしれません。でも、そこに住んでいる住民は一体どうなるのでしょうか。本当に難しい問題ですね。

 そこに明るいニュースが入ってきました。東京の大手解体業者フジムラさんが無償で鉄柱を解体撤去するというのです。2ヶ月かかるという大工事を無償でやるというのですから仏様のような会社です。ネット上では「何か裏があるのでは・・・」などと書き込みがありましたが、裏があろうとなかろうと数千万円以上するであろう工事をタダでやってくれるのですから、こんな有難い話はありません。とにかく一刻も早く鉄柱を撤去するべきです。さもないと家がドンドンとダメになっていきます。テレビやネットの映像しか見ていないので確実なことは言えませんが、今だったら建替えをしなくても大規模修繕で住めるようになるのではないかと思います。

 それにしてもこのフジムラという会社はすごいですね。どうしてこのような決断をしたのか私も経営者の端くれとして、この会社の経営者のコメントが聞きたいです。人にはやさしく親切にしなさいと、常日頃言っている私ですが、とてもこんなことは出来ませんし、またその力もありません。同じ経営者として心から尊敬します。

 「貧女の一灯」という物語があります。釈尊がマガダ国王から城に招待されました。国王は釈尊のその帰りの夜道を照らすため一万の灯火を用意しました。その話を聞いたその日の食事にも事欠く貧しい老婆は、自分も釈尊に献じたいと言って、その日の稼ぎで食べるものを買わずに油を買い、一灯を差し出したのです。その夜、釈尊は王の用意した一万の灯火の中を返っていくのですが、老婆の献じた一灯もありました。即朝、王が献じた一万の灯火はすべて消えていたのですが、老婆の一灯だけは明々と燃えていました。釈尊の弟子であり神通力第一とよばれていた目連尊者が消そうとしましたが消えません。釈尊は言われました「そなたの力をもってしても消えないのは、この一灯こそが真の布施になるからだ」と。

私には到底まねのできないことです。真の布施とはその人が持っているものすべてを差し出すことであると仏教学者のひろさちや先生は言っておられます。私にもほんの僅かですが財産があります。それは病気になった時、家が地震や台風で壊れたとき、明日の食べ物を買うためと、やはり先のことを考えてしまします。この講では、過去もなければ未来もない、あるのは今この一瞬だけだ、と言いながら矛盾ですよね。やはり煩悩から抜け出すことは出来ないようです。でも、いつの日かフジムラさんのような会社にしたいという願いだけは止むことなく持ち続けたいと想っています。