ソウルメイト
今月はB.ワイス博士の著書「魂の伴侶」よりペドロとエリザベスの物語を記してみます。
ワイス博士は著書「前世療法」で世界的に有名な精神科医です。前世を知ることで、今生でのいろんな不都合な症状が快癒するということを、数々の退行催眠(催眠により前世の記憶を呼び起こす行為)によって証明された方です。そういう医師と知ってペドロとエリザベスは同じ時期に、まったく別々に、彼の治療を受けるべく訪れたのでした。
ペドロはメキシコ人でハンサムな29歳、父は実業家で資産家です。ペドロの兄は少し前に事故で亡くなっていました。やがてはメキシコで父の跡を継がねばならない立場にあります。ペドロは亡くなった兄と再会できるかもと、考えワイス博士を訪ねました。
エリザベスはアメリカ人でブロンド美人の32歳、会計事務所を経営。両親はすでに亡くなっています。亡くなった母を天使のような人として今も思い続けています。亡くなった母に会えるかもと、考えワイス博士を訪ねました。
二人は退行催眠を何度も受けます。前世のペドロはある時、イギリス軍人でスペイン兵との戦いで首と左肩を切られ命を落とすことになります。ペドロがこの前世の記憶を思い出してから、長年原因不明であった首と左肩の痛みは、まったく無くなってしまいました。
またある時、ペドロはモンゴルで遊牧民として暮らしていました。白いドレスを着た老女(彼の母)が片手に白い羽根をもって言います。「彼女の手をとりなさい。彼女に手を差し伸べなさい」彼は一緒に育った娘と結婚します。しかし、他部族の襲撃に会い、村人は大虐殺されます。彼の妻もどうなったか分かりません。
一方、エリザベスは前世で船から暗闇の海に落ちて溺れ死ぬ体験を思い出します。その結果、彼女は暗闇と水への恐れ(泳ぐことへの恐怖感)から解放されるのでした。そして、ある退行催眠で、彼女は2000年前のローマの圧政に苦しむパレスチナ人の女性の人生を思い出します。彼女の父親は陶工で名前はエリといいます。エリは理由もなくローマ兵に馬で引きずられ虐殺されます。エリザベスは臨終間際の父エリを膝の上に乗せ、体を前後に揺らしながら「お父さん、とても愛しているわ」と言い、そして父は死にます。
ペドロも同じ記憶を思い出します。その場面を著書から抜粋します。―――「私は地面に横たわっています。ひどくけがをしています。——近くに兵士がいます。彼らは私を地面や岩の上を引きずっていきました。——私は死にかけています」——中略—–その男の娘が泣き叫びながら彼のそばにやってきた。そして、その男の頭をそっと自分のひざの上に抱き上げた。彼女は一定のリズムで体を前後に揺らしていた。——中略—–「愛しているわ、お父さん」彼は娘がやさしく言うのを聞いた。—–中略—-彼はこの娘をとても愛していた。彼女と別れるのは、がまんできないほど、つらく悲しかった。彼の目はついに光を失った。そして、ひどい痛みも消えていった。それなのに彼はまだ見ることができた。とても軽く、自由を感じていた。そして、娘のひざに頭と肩をもたせかけている自分の傷だらけの体を見下ろしている自分に、気がついた。娘は泣いていた。彼女は父親が今はもう安らいでいることにも、苦痛が去ってしまったことにも、まったく気づいていなかった。彼女は父親の体だけに思いを寄せて、ゆっくりと体を前後にゆすっていた。しかし、その体には父親の魂はもう宿ってはいなかった。——中略——彼はすばらしい光に気がついた。それは太陽が十個集まったよりも、もっと輝き、もっと美しかった。しかも、彼はその光をまっすぐに見ることができた。その光の中から、近くにいた人物が彼を手招いた。おばあさんだ!彼女はとても若くて、輝いて、健康そうに見えた。彼女のそばに行きたいと思った瞬間、彼は光の近くにいる彼女の隣にいた。「またお前に会えてとてもうれしいわ」と彼女が思うと、その言葉が彼の意識にとらえられた。「ずっと会っていなかったもの。本当に久しぶりね」彼女は両腕で彼を抱きしめ、二人は一緒に光の中へ歩いていった。――――
続いてエリザベスが思い出します。彼女は広大な起伏のある平原と、頂上が平らになっているたくさんの丘を見ていました。彼女は旗と白い羽根のついたテントに住んでいます。夫と赤ん坊と、夫の母と平和に楽しく暮らしていました。夫婦はとても愛し合っていました。
夫の母は、自分の実母が死んだときに娘として引き取ってくれたのでした。そして、その家で一緒に育った青年と結婚しました。ある時、夫たち男が狩猟に出かけました。そしてそこを敵に襲われほとんどの人が殺されました。彼女の夫の母も殺されました。彼女の赤ん坊も殺されました。美しい彼女は殺されずに敵に連れて行かれました。連れていかれたところはアジアの北で中国の西のほうだと覚えていました。
前世に出てくる人たちは、今生の人と同じ場合がよくあります。特に強い結びつきにある魂をソウルメイトと呼びます。妻・夫・恋人とのかかわりあいを何度もの人生でもちます。ソウルメイトとは”何度もの人生を身近に生まれて、互いの成長を促すために貴重な役割を果たしあう関係の意識体たち”と飯田先生は定義されています。ペドロとエリザベスは少なくとも分かっているだけで2回の人生を共有しています。ローマ時代のパレスチナでは父娘であり、モンゴルの遊牧民族の時は恋人、夫婦となります。この二人がソウルメイトであることを悟ったワイス博士は、二人を偶然に出会ったように画策します。(精神科医は患者のプライバシーを絶対に明かせない守秘義務が課せられています。あなたたち二人はソウルメイトであると告げたいが、それは職務上できないため)ワイス博士のオフィスの待合室で二人は今生で初めて出会いますが、しばらく見つめ合っただけで、別れてしまいます。ペドロはメキシコに帰ってしまいました。ワイス博士もこれまでかとあきらめたのですが、数か月後、二人は空港の待合室で偶然にも出会うのでした。そして話し始めます。同じ飛行機に乗り隣同士に席をとり、ペドロは彼女の手をにぎるのでした。―――心の中で彼はもう一度、何回も夢の中にあらわれたあの白いドレスを着た苦しげな女性の言葉を聞いた。「彼女の手をとりなさい—–彼女に手をさしのべなさい」——中略——その瞬間、彼の心に電流が走った。エリザベスは、この電流によって、数々の転生が一瞬のうちによみがえるのを感じた。こうして二人の再開は果たされたのだった―――
この世の中に偶然など何一つないことがこれらの事実からもわかります。すべては何らかの大きな力によって動かされているのかもしれませんね。大切なことは、なぜ私たちは何度も何度も人生を繰り返すのか、ということです。私は学ぶため、そして学んで実践するためではないかと考えています。一度の人生では決してなしえない「信じること、ゆるすこと、愛すること」を学ぶためではないかと。皆さんはどう思われますか?