熱橋

皆さんは熱橋(ねっきょう)という言葉をご存知でしょうか。読んで字のごとく熱の橋ですから、つまり熱を伝える(伝導する)個体を意味します。
熱を伝えるとは具体的に言えば、冬、それを通して熱が逃げ、夏、それを通して熱が入ってくるということです。良い住宅の定義を「熱が逃げない、入らない家」としたら、熱橋は完全なマイナス要因になります。そして、熱が逃げない、入らないという家の性能を数値化したものを外皮平均熱還流率(UA値)といい、数値の少ないほうが性能が良いということになります。
熱橋は熱伝導率と密接な関係にあります。樹脂とアルミの熱の伝わり方は1000倍違うとは、よく言われることですが、すなわち樹脂(塩ビ)の熱伝導率は0.13~0.29です。一方、アルミは200~230です。計算式は200÷0.13≒1538倍 200÷0.29≒689倍 平均すると(1538倍+689倍)÷2≒1113倍ということで1000倍違うと言われるのです。
では断熱材の熱伝導率はというと、大体0.022~0.05くらいです。ここで注意しなければならないのは、断熱は熱伝導率だけで判断するのは間違いです。そのもの(材)の厚みが当然関係します。それを計算式で表すと 厚さ(m)÷熱伝導率=熱抵抗値(R値)
となりR値の大きさが熱の通りにくさを表します。

計算例  厚さ2センチのポリスチレン断熱材(熱伝導率0.028)のR値は
0.02÷0.028=0.71
厚さ4寸角(120角)の杉の柱(熱伝導率0.12)のR値は
0.12÷0.12=1.0

ということは厚さ20ミリのポリスチレン断熱材と120ミリ角の杉の柱を比べてみると、杉の柱のR値のほうが大きいのです。つまり、厚さ2センチの断熱材では断熱効果は薄いということです。
私は10年ほど前に鉄骨構造(熱伝導率約50)を20ミリの板状断熱材(ネオマフォーム)で外張り断熱した家を体験したことがあります。その家は真冬、エアコン暖房してしていましたが、室内温度はわずか10℃くらいまでしか上がらず、悲惨な状況でした。
まず20ミリという低レベルの断熱材に、躯体の鉄骨が断熱されていないベランダまで突き出ていたため、熱はどんどん外へ逃げて行ってしまっていました。完全な鉄熱橋でした。私たちは断熱を考える時、いろいろと考えなければなりませんが、熱橋も大事な要素であることを忘れてはいけないと思います。

2016年7月
文責 健康住宅指導員 脇長