沈黙は金

半年くらい前から股関節が徐々に痛くなってきて、とうとうあぐらをかくにもこと欠くようになりました。お医者さんに見てもらったら、「股関節通ではない、なんとかという股の筋が痛んでいる、ストレッチを半年くらい続けてやれば多分治るだろう」とのことでした。そのことを妻に言いますと「お父さんは(私のこと)何をやっても続かないから、ストレッチも多分、三日坊主よ。それに原因は肥満じゃないの。だいたいお父さんは飲み過ぎのアルコール太りよ」と断罪。もちろん反論しました。「40歳で五十肩になったみたいに、これは体質や。それに、適度な飲酒はかえって身体にええということをお母さんは(妻のこと)知らんの」そこから夫婦の間で、それぞれの両親、友達、知り合いを引き合いに出し、適度な酒量がどれ位なのかという議論が続きました。結果はもちろん決裂です。

ちなみに、私の酒量は今でしたら晩酌で日本酒1合、第3のビール350CCを1本、焼酎の水割りをコップ1杯、その程度です。決して妻が言うような飲兵衛ではありません。

 さて翌日ですが、一気に涼しくなりました。妻が「お父さん、いっぺんに涼しくなったわね」私「大陸の高気圧に覆われてきたからや」妻「お父さんは絶対アスペルガーやわ。涼しくなったね、と言われたら、ほんまやね、涼しいね、と応えるものよ」実はこのやり取りは10年以上続いていると思います。アスペルガーの定義については、以前もこの講で述べたことがありますが、分かり易く言うとKY(空気読めない)と似たようなものと思って下さい。(厳密には相当違うものがあります)私は「アスペルガーで会社の社長が務まるもんか」と横柄な反論をしましたが、これは当を得ていません。世界一の大金持ちマイクロソフトのビル・ゲイツ会長がアスペルガーと言うのは定説になっていますから。いずれにしても、このような私の応答が妻を傷つけ続けていたというのは事実のようです。
 アスペルガーかKYかは別にして、人は何気なく言った言葉で相手を傷つけるということはよくあります。私もよくあります。自身で記憶しているだけでも相当ありますから、ひょっとしたら毎日、私の言葉で家族、お客様、社員、友達、経営者仲間、取引先等々の人々を傷つけているのではと、空恐ろしく感じる時があります。そんな時、必ず意識するのが「沈黙は金」という格言です。そうだ、これからはもう必要なこと以外はしゃべらないでおこう。日本には昔から言わなくても分かるだろう、という以心伝心という言葉もあるし、そのほうがきっとうまくいく。それに、私の憧れの高倉健さん、木枯らし紋次郎はとても無口です。カッコいいし、最後は必ず勝つし、これでいこう、とその時は思います。しかし、現実はそうはいきません。夫婦間、親子間でも以心伝心は通用しません。いくら心の中で有難うと感謝しても、言葉にしなければ相手には伝わりません。言葉に出してこそ伝わるし、価値があるのです。しゃべると人を傷つけ、しゃべらないと想いは伝わらない。程度の差は別とすれば、やはり、最悪、回りの人の気分を害したとしても、しゃべらないよりは、しゃべるほうがまだいいと思います。私達の世代は親から、人に迷惑をかけるなと教えられてきました。しかし、人は人に迷惑をかけるものです。お互いに小さな迷惑をかけ合い、お互いにそれを許し合える、そんな世の中になって欲しいと心から願うばかりです。——————–あれから2週間、ストレッチはやっぱり5日で終わりました。相変わらず股の筋は痛みます。 これってひょっとしたら天罰?

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