社長の義憤

当社は住宅建設と不動産仲介を業務の二本柱としています。私の目指す「地域の皆様への住宅総合サービス企業」を実現していくためには、この両方の確立が絶対必要だからです。例えば、当社自慢のソーラーサーキット工法でお家を建てたいというお客様がいらっしゃいます。でも土地がありません。多くの方はそうです。住宅展示場に来場されるお客様の約80%は土地を所有されていないと大手ハウスメーカーの幹部から聞いたことがあります。ですから、私たちは土地を見つけその情報をお客様に提供しなければ、お客様はお家が手に入らないということになります。
また、全ての方が新築できるわけではありません。土地を買って新築住宅を建てる、人の一生でこれ以上の買い物はまずありません。当然高くつきます。具体的に言えば、当社の営業テリトリーで土地を買って家を注文で建てれば、最低でも2,500万円は必要です。平均で3,000万円位です。ですから、予算的に無理がある、又、無理したくない、と考えられ中古住宅の購入を目指すこともごく自然なことで、そういうお客様もまた大勢いらっしゃいます。
さらに、建替えを検討されているお客様は、当然仮住まいが必要になってきます。そのためには、賃貸住宅のお世話もしなければなりません。———等々。
決して、他社を非難するつもりはありませんが、当社は新築の請負しかやりません、弊社は不動産売買仲介しかやっていません、うちは賃貸仲介のみです。
これでは、お客様は大変不便です。こと住まいに関しては、全て当社で、というのが本当の住宅会社ではないかと私は信じています。

 ここで、ひとつ大問題が発生しています。不動産売買仲介、平たく言えば中古の一戸建、中古マンション、土地等の仲介のことです。
 少し専門的になりますが、不動産業者を律する法律に宅地建物取引業法(以下、業法という)というものがあります。この法律は不動産の適正な取引の確保と、購入者等の利益の保護そして、不動産の流通の円滑化を図ることが目的としてつくられたものです。問題になっているのは業法第34条の2の5項で定める、「業者は専任または専属専任で売主から不動産の売却依頼を受けたら必ず、国土交通大臣指定の流通機構にその情報を登録しなさい」という規定。さらに、同法50条の2の4に指定流通機構の性格を定めた条文「宅地及び建物の取引の適正の確保及び流通の円滑化を目的として———–」
 これらの規定を、業者が全て正しく実行していれば何の問題もありません。ところがこの法律の趣旨を、会社の利益を優先させるがためことごとく無視している業者が存在しているということです。
それも、それが世間で言うところの大手不動産会社に多いという実態があります。私はこのことを見過ごすことが出来ないのです。
例えば、どんなことかと言えば、仮にAさんという人が自宅を買い換えるためにT社という業者に売却依頼をしました。Aさんは自宅が3,400万円で売れればAさん夫婦にとって終の住まいとして介護つきの分譲マンションに移れる夢を持って売りに出しました。今の家は子育てする時代には最適でしたが、子供3人はそれぞれ独立し、5LDKの家は広すぎるし、また庭の手入れも夫婦とも最近病気がちでままならなくなっています。不動産業者はこのようなお客様の夢や希望が実現するため最大限の努力をしなければなりません。まして、3,400万円という価格はT社がつけた価格です。T社はAさんと専任媒介契約を
締結し、指定流通機構に登録しました。その情報を知ったW社は自分のところにこの物件にぴったりはまるお客様(Bさん)がいました。そこですぐに、T社に電話し物件の内見(お客様を物件に案内すること)依頼しました。T社の対応は「この物件はあいにく商談中となっています。内見はご遠慮下さい。」しかたなくK社は、諦めました。それから、2週間経ちました。T社のAさん宅のオープンハウスのチラシが新聞折込されました。W社の営業マンもそれを見ました。すぐ電話し、自分のお客様Bさんの内見を再度要請しましたがT社は「すいません、この物件は契約予定となっています。内見は出来ません。」
またまた、拒否されました。
それから、3ヶ月が過ぎました。このAさん宅が3,200万円に値下げして流通機構に登録されました。それを知ったW社の営業マンは半ば諦め気分でT社に電話しました。応えはまたまた「——–商談中です—-。」さすがに、W社の営業マンも諦めて、自分のお客様BさんにはAさん宅の近所の他の物件を紹介しました。物件価格は3,500万円でした。Bさんも急いでいたのでそれを買うことにしました。そして、Bさんは3,500万の物件に引っ越しました。
それから、2月が過ぎました。T社のオープンハウスのチラシにAさん宅が2,900万円で出ていました。Bさんはそのチラシをみて、一人で内見に行きました。そこで、初めて中を見て、ああやっぱりこの物件にすればよかった。3,400万円の言い値でも買っていたのに、と思い何か納得できない気持ちと腹立たしし気持ちで家路につきました。
こんなことが許されていいのでしょうか。T社はAさんの夢や希望など
これっぽっちも考えていないのです。あるのはただひたすら、自社の利益のみです。仲介料を売主、買主双方から稼ぎたい、この経営方針がAさんのみならず、Bさんの利益も喪失させていったのです。このような業者を悪徳不動産業者と言わずしてなんと言うのでしょう。
結局Aさんは売るのをやめたそうです。資金計画があまりに狂ってしまったそうだからです。