赤穂にて

4月の14日15日と会社の連休を利用して、妻と赤穂温泉に行ってきました。往路では”世界の梅公園”で散策し、そこが有名な綾部山梅林と隣接していることを初めて知りました。綾部なので私はてっきり京都に綾部市というところがあるので、ずっと京都だと思い込んでいました。
兵庫県に住んでかれこれ27年になりますが、思い込みとは恐ろしいものですね。教訓になりました。梅はもうとっくにシーズンが終了していましたので花は見ることが出来ませんでしたが、かわいらしい新緑がいっぱいに色をつけ、大いに播州路の春を感じさせてくれました。
 赤穂温泉には今までに5回ほど行ったことがありますが妻は初めてです。赤穂に行くのなら鯛の塩釜焼を食べたいと思い、そのコースを頼んでおきました。以前、やはり赤穂温泉ですが一度だけ鯛の塩釜焼を食べたことがあります。もともと鯛は子供の時からの好物ですから、その時の味はずっと覚えていました。瀬戸内海を眺めながらの温泉にゆったりと浸かり心身ともリラックス、あー極楽、極楽—-。そして夕食に期待をふくらませ席につきました。鯛のお造りに鯛のお吸い物、続けて鯛の荒焚き、これが結構な量、お酒もかなり入ってきています。お腹も結構ふくれてきました。そこへ待望の塩釜焼が出てきました。仲居さんといってもうちの娘と同い年くらいのお姉さんですが、塩釜焼を前にして「こちらでしてもいいでしょうか?」かなり酔っていたこともあり、またわが娘と同い年くらいの娘さんということもありました。頼まれると断れないという性格も災いしました。「どうぞ」と返事しました。お姉さんの言っている意味が良く分からなかったのです。木槌を掴むや、塩で固まった鯛をガンガンガンと叩くのです。あー!これは私が自分でやりたかったのに!自分で塩のかたまりを割って、中にある鯛の身をつついて食べるのが楽しみでわざわざ赤穂に来たのに!でも、気が弱くて「やめて!自分でやるから」とは言えなかったのです。鯛の身は美味しかったですが、その後、続けざまに鯛の揚げ物、鯛しゃぶと出てきますと、もう満腹を通り越してあげそうになってきました。その上、追い討ちをかけるかのように、鯛そうめん、とどめに鯛の薄造りが出てきたときにはさすがに箸を付けることが出来ませんでした。何事も”過ぎたるは及ばざるが如し”教訓2となりました。もうしばらく鯛は見たくありません。
 翌日、日生からフェリーに乗って小豆島に行きました。4月半ばというのに寒い日で、船から見える小豆島は小雨にけむり、島の上半分は霞がかかって誠に幻想的な風景でした。島に着くや否や名所の寒霞渓目指して車を走らせます。途中、一台の車ともすれちがいません。何かいやな予感がしてきました。そして山頂に着いたとき、そこは雪でした。4月半ばで瀬戸内の小豆島、まさか雪に降られるとは。霞がかかって自慢の眺望はほんのわずかしか得られませんでした。
でも霧のかかった山はどこまでも神秘的です。時おり霧の隙間から見える瀬戸内に海は、雪の中でもなぜか春の日差しに輝いて見えました。寒さと霞と渓谷と、誰が命名したのか春になってもまさに”寒霞渓”そのものです。”名は体を現す” 教訓3となりました。
 いろんなことがあり結構面白い旅でした。また教訓も得ました。そして何よりも妻が喜んでくれたことが私にはこの上もない幸せでした。妻には本当に心から感謝しています。貧乏な時も、病気の時も、そこそこの生活が出来るようになった時も、いつも妻はそばにいて励ましてくれました。随分とのろけてしまいましたが、今の私には妻と二人の娘がいれば他に何もいりません。その上やりがいのある仕事と健康と家まであります。私は本当に幸せな男です。 時々思い通りにならないことも起こりますが、思い通りにならないことこそが、この世で最も価値あることという飯田先生の教えに従い、思い通りにならないことを今は喜びとするようにしています。