人の肌に合う素材「自然素材という選択」

地球規模で海洋プラスチック問題が問わせる時代になりました。石油から生まれたプラスチックの製品は、私たちの生活の中にすっかり浸透し、なくてはならないものになっています。しかし、広く使われることによって、新たな環境への問題を生み出し始めています。そして、プラスチックに代表される人口の材料は生活でだけはなく、住宅そのものにも深く関わっています。
*本編は一般社団法人「住まい文化研究会」のおうちのはなしを掲載しております。
プラスチックと自然素材

今、私たちの身の回りにあるものを、あらためて冷静に見てみましょう。どれだけ、プラスチックの製品が多くなっていることでしょうか。レジ袋やストローは、買い物バッグを持たなくても、あるいは歩きながら飲料を飲むにも、とても便利なものです。環境保護の観点から有償になりましたが、ちょっとだけ使って用がなくなったら捨てられます。そして、これからのプラスチックごみが正しく回収されずに、海洋に流れ着き、大事な地球の環境を破壊しているのです。
他にもさまざまな電化製品から、衣類などを含めた身に着けるものまで、数えきれないほどの製品がプラスチックでできています。木材のように見えるものや、金属のように見えるものも、じつは印刷され、メッキされたプラスチックは加工が容易で、コストも安いので工業製品に向いているのです。
でも、今さらプラスチックを使わないで、生活品を揃えることはできないでしょう。そんなプラスチックにさまざまな生活品が取って代えられたのもわずか数十年ほどの歴史です。プラスチック以前は、多くは自然の素材で作られていました。木を削り、草を編み、土を固め、石を削って作られていたものです。そして「本物」という言葉で、私たちはこうした自然の素材に愛着を感じています。
人の肌に合うもの

たとえば、食事の時にお椀ひとつを持って触った感覚で、漆器とプラスチックを区別している瞬間がありませんか。焼き物と比較すれば重さだけでも分かりますが、なんとなく肌に触れた触感で判断しています。じつは人の肌はとても敏感で、超高感度のセンサーです。目や鼻や耳の感度では動物に適さなくても、肌の触感は動物界一といっても過言ではありません。
たとえば猫のヒゲや犬の鼻先の感覚がなくても肌で微風を感じることができ、目をつぶっていても肌で光や熱の方向を感じることができます。さらにその感覚は熟練した職人の指先では精密機械で図るほどの微妙な凹凸を感じることもできます。
その触感覚で触れば、微妙なプラスチックの感覚を察して、何となく偽物という気持ちが湧く人も少ないと思います。
逆に、人が愛着を感じるのは木材や石などの自然素材です。木材や動植物の繊維は、人間と同じ地球の上に生を受けた仲間が生み出す素材です。生物由来の物質に愛着生まれるのは当然です。
また、石や土を固めたものは生物由来ではありませんが、それなりに愛着を感じます。金属は自然の鉱石から取り出したものですが、金属アレルギーのある人も少なくありません。
人工の化学物質には多くのアレルギーがあると言われていますが、これからもパッチテストをして検査するように、肌に聞いて確認してみるのがよさそうです。
木を使った家

戸建て住宅のほとんどは木造で建てられています。森で育った木材が駆り出されて、住宅の構造材となります。この木材はまさに自然素材の代表格です。
自然が生み出した木材は、住宅の構造用の材料として鉄やコンクリートよりも適材です。比強度では鉄やコンクリートよりも強く、火に対しても決して劣らず、熱を伝えないのも木材がいちばんです。木造で4~5階建ての建築も可能になり、火災時の熱に弱い鉄を守るために、外側に木材を貼ってカバーすることも行われるようになってきました。
その意味では人の技術力も、まだ自然が生み出した木材にはかなわないということです。
最近ではこうした構造材の木材を、壁や天井の中に隠すのではなく、インテリアに現わして使う事例が増えてきました。そのような家では、木の匂いを楽しむことができる家になりました。
ただし、自然素材には経年の変化が現れやすいものです。たとえば木材は乾燥は進むことで干割れが発生します。髪の毛のように細い毛割れは、現しになった木材には必ず発生すると考えておいた方が良いでしょう。さらに木材の色も、最初は白っぽかったものが黄変し、年数が経つとやがて飴色によって馴染み、バラツキがおさまります。
鉄だっけ錆びますし、プラスチックも紫外線で白濁しもろくなります。こうした人口素材の経年劣化ではなく、自然素材の木材の場合には、経年美化であると考えることもできます。
床に使う自然素材

木材が仕上材に使われるケースが多いのは床です。住宅の床は、板張りのフローリングが大多数です。
このフローリングにもたくさんの種類があって、木のように見えても自然素材とはいえない建材もあります。たとえば紙に木目を印刷し、凹凸の加工をして作られている製品はあります。紙でも、強い塗装で皮膜してあるので、確かに床材として十分に使えるものになっています。
また、1mm以下に薄くスライスした木材の単板を表面に張って塗装したフローリングもあります。多くはウレタン系の化学塗料でマニキュアのように皮膜をつくって保護してあり、触感は木の感じがなくなっています。
こうしたフローリングでは自然素材といれるでしょうか。でも無垢のフローリングでは、どうしても多少の反りや変形、さらには収縮による隙間ができるものです。
そこで、むしろ変形も楽しむくらいが、自然志向の人の楽しみ方です。そして、削りなおせばまた新しい木の面が出てきて木の香りもします。表面の塗装も樹脂オイル仕上げが自然素材派の好みです。
無垢材の欠点を補うように、変形しにくい合板下地のフローリングでも、表面に貼る単板厚さを2mm~6mmに厚くしたフローリングもあります。自然素材の定義も難しいところですが、無垢材と同じように削りなおすことができます。
味わいを楽しむ

自然素材の特徴のひとつに、1つとして同じものがないことも上げられます。樹木が育るためには葉を繁らせるための枝が必要であり、枝の跡が製材した後に節として残ります。この節の付き方も、1本として同じものはありません。
逆に、印刷された木目や薄い単板を張り合わせたものは、遠目で見るとどうしても工業化されたような均質感があります。今では節があることが本物の証であると理解している人たちが増えてきました。バラツキの味わいを楽しむのが、自然素材の楽しみです。
床の自然素材としては、玄関三和度やアプローチなどに張る石もあります。天然の石は、いわば地球が焼き上げた焼き物のようなものです。雨風さらされても、人が土足で踏みつけても、石が簡単に劣化しないことは誰もが実感していると思います。
それに対して、タイルは土や岩から人間が焼き上げた人工の石のようなものです。その意味では、大きく自然素材のひとつとして考えられます。しかし、じつは日本のタイルは技術が高いので、均質で工業的に感じます。海外のローテクで焼き上げたタイルの方が、味わいがあると好む人も似ます。多少のバラツキがあった方が、自然素材の感覚が残されていると言えます。
壁に使う自然素材
壁に使う自然素材にも、いろいろあります。床と同じ木材を使うとか、和紙を貼るケースもあります。もちろんさまざまな塗り壁も、自然素材からできているものが多くあります。壁や天井の面積は大きく、大事な室内の空気環境をつくりあげる素材ですから、慎重に選びたいものです。
ところが圧倒的な多数で使われているのはビニールクロスです。安価で扱いやすく、種類も豊富なので広く普及していますが、自然素材とは呼べません。安定した供給と生産、施工ができる大量生産の家ではわかりますが、かけがえのない自分の1棟で暮らしたいと思った時には、やはり自然素材の中から選びたいものです。ましてや、四方をビニールに包まれて暮らしていると考えれば、決して気持ちのよいものではありません。
壁に使われる自然素材を代表するのは漆喰です。石灰石が原料で、日本でも世界でも長い歴史の中で使われてきました。白鷺城(しらさぎじょう)で有名な姫路城も、倉敷や川越などの蔵の街並みも、地中海沿岸の白い街並みもみんな漆喰でできています。

漆喰の他に、珪藻土も自然素材です。珪藻土は太古の植物プランクトンが堆積した化石から作られます。顕微鏡で見ると多孔質になっていて、調湿性や臭いを吸着する働きがあるので、やはり室内の空気環境を整えるには、とても向いている材です。ただし漆喰とは違い、固めるための成分を加える必要があります。その材料も確認しておかなければなりません。
また、ビニールクロスを貼るよりも手間がかかり、職人さんの技量も必要とします。その分コストもかかり、手入れも必要です。
メンテナンスとDIY

そもそも、ビニールクロスがここまで広まった理由は、なによりもコストの安さとメンテナンスの容易さです。たとえば、多少の汚れがついても中性洗剤を使って拭き取れば汚れを落とすことができます。安くて汚れないのであれば、住まい手によってこれ以上の材はありません。
しかし化学物質のビニールは、エアコンなどの風にあたると空気との摩擦で静電気を生じ、細かい粉塵を吸着します。さらに付着した粉塵に湿気が溜まります。ビニールクロスによくカビが生えるのはこのためです。結果的にはカビの胞子がいっぱいの室内空気となりかねません。
また貼り替えも確かに簡単にできますが、何度か貼り替えているうちに下地のボードも傷みますので取替が必要になります。
その点、自然素材で塗った壁は、調湿性能があり、室内空気をキレイにしてくれます。そして塗り壁のメンテナンスは、重ね塗りが可能です。家全体を一度に塗ると大変なので、毎年少しずつ自分で塗ることができるような材料も開発されています。
なによりもこうしたDIYを楽しみ、暮らしているうちに深みのある壁に変わってゆくのは、やはり自然素材の塗り壁の楽しみ方です。長い目で見れば、コストもメンテナンスもビニールクロスの方が良いとは思えません。
家は、長く使うものです。なによりも本物の心地よさを肌で感じながら、健康に暮らしてゆきたいものです。そのためには、自然素材を選んでおくことは欠かせ事ができません。
さいごに
人の肌に合う素材「自然素材という選択」はいかがでしたでしょうか?自然素材は触り心地や空気環境を良くする働きがあり、人の健康にも良い影響を与えます。セレクトホームでは、そういった観点からより良いものをお客様へお届けするために自然素材を推進しております。「無垢の杉床」「しっくい壁」「珪藻土壁」など本文にも出てきていましたが、それぞれにある性能や効果から触れ心地や住み心地が大きく変わると考えています。
また、自然素材ならではの経年変化は味わいのあるものです。セレクトホームのショールームでも杉や桧、珪藻土の塗り壁をご覧いただけます。現在の店舗に移転して10年を超え、一度社員でメンテナンスも行いました。本文中にもあったようにメンテナンスも手間がかかります。全てを一度にするのはなかなかできることではありませんが、1年を通して少しずつ行えればいいのだと感じました。
過去にもDIY好きなお施主様が「家づくりは建てる時だけでなく、住みながらもできる」というふうにおっしゃっていました。確かに、さまざまなインテリアや家具でテイストを変えることもできますが、DIYでお気に入りの住み家にするのも一つの方法だと思います。メンテナンスもそんな風に感じていただければいいなと感じました。
最後までご覧いただきありがとうございました。木の家づくりをご検討の方はぜひセレクトホームまでお問合せ下さい!