水蒸気と結露

湿気による室内の不快感

一般的に、梅雨の時期はジメジメして不快だと言われますが、私にはこの8月のほうがはるかに不快です。神戸の今年6月の平均気温は23℃で平均湿度は69%、8月は29.4℃で66%です。不快指数表(別紙)というものがあります。これに照らし合わせても、分かるように気温17℃~25℃の間は相対湿度が30%であろうと100%であろうと快適だということです。もっとも平均気温と平均湿度ですから、瞬間的にはやや不快、あるいは不快の範疇に入ることもあったのですが、それは全体から言えば僅かです。ですから6月は快適な季節と言えるのではないでしょうか。(雨が嫌いという人には不快な月です)8月は平均が29.4℃ですから湿度40%以上はやや不快、不快となります。湿度が40%以下になることはありますが、ほんの一瞬です。したがって、8月は不快な月と断定できます。

以上のことは全て外気温、外気湿度のことです。家の中とは別の問題となりますが、現実には外気の影響を大きく受けることになります。この時期、外気温33℃、湿度60%という状態はよくあります。絶対湿度表(別紙)を参照して下さい。この表は空気1立方メートルの中に、何グラム(何CC)の水が水蒸気として含まれているかを示すものです。33℃、60%の時は21gです。今、家の中は冷房しています。26℃まで冷やしました。除湿が無いものと仮定すれば、この空間に水蒸気がどんどん侵入し、エアコンで26℃を維持し続ければ、湿度は90%になります。不快指数表によればやや不快となります。26℃、90%の絶対湿度は21gです。外気と同じ量です。なぜこのような現象が起こるのか。前回、”熱は高いところから低いところに移動する”との大原則を言いました。水蒸気も同じです。

“水蒸気圧の高いところから低いところに移動する”これも宇宙の法則です。簡単に考えて下さい。
“水は高いところから低いところに流れる”これと同じです。宇宙の法則は、すべてを平準化(平等に)しようとするのです。しかし、家の中を外と平等にされてはかないません。私たちは知恵を絞って、快適な空間を作り出さなければなりません。そのためには水蒸気の性質を知らなければなりません。水蒸気の大きさは一般的には1000万分の3ミリ~10万分の4ミリと言われています。この大きさでは金属とガラス以外の個体は、ほとんど通過できます。家で金属とガラスと言えば窓サッシです。ですから、窓サッシ以外のものは、すべて水蒸気は透過します。外壁も屋根も内壁も透過します。窓サッシといえども窓の外枠と内枠の隙間、内枠間どうしの隙間から水蒸気は入ってきます。水や風は通しません。でも、水蒸気は入ってきます。防ぐことはできません。どうすればよいでしょうか。答えは一つです。家の気密性能を上げるしかありません。水蒸気の侵入を防ぐことは不可能ですが、侵入量を減らすことと、遅らせることは可能です。

家の中で4人家族は1日に約12ℓ(12000g)の水蒸気を発生させます。延床120㎡の家の体積は120×2.5m=300㎥。室温20℃で300㎥の空間が含むことのできる最大量は、絶対湿度表から湿度100%で17.2gですから、17.2g×300㎡=5160g。一日の水蒸気発生量は12000gですから12000g-5160g=6840g。6840g=6840ccなんと一升瓶4本分の水蒸気がこの家では収容しきれません。この収容しきれない部分はどこかで水になります。これが結露です。窓ガラスなどの見えるところの結露ならまだ救いはあります。でも、見えないところで、特に壁の中で結露し続けたら最悪です。カビが発生し、ダニが発生し、腐朽菌が発生し、最後に家が腐ります。このような家が無数に存在します。そして今も造り続けられています。恐ろしいことです。

前項で水蒸気は水と同じで、水蒸気圧の高いところから低いところへ移動する、これは宇宙の法則で一般の住宅では止めるすべがないことを記しました。夏は外から内へ、冬は内から外へ移動します。夏、外から内へ移動することについては、室内の不快感というものの発生はあるものも、壁体内の結露の発生(夏型結露)は、よほどのことがない限り、さほど心配する必要はないと考えられます。問題は冬型結露です。これはかなりの確率で発生します。そして家を腐らせます。これは防がなくてはいけません。以下にその方法を記します。

冬型結露の対策

  • 充填断熱(内断熱)の場合、柱の外に透湿抵抗の高い面材(構造用合板、OSBボード、サーモプライ等)を張らない。張るのであれば透湿抵抗の低いもの(ダイライト、ハイベストウッド、ケナボード等)を張る。
  • 充填断熱材(内断熱材)にグラスウールやロックウールではなく、羊毛断熱材等の大きな吸放湿機能のあるものを使用する。
  • 外断熱にする。
  • 外断熱し、さらに壁体内の通気層を確保する。
  • 外断熱し、壁体内通気層を確保し、さらに通気層内を強制換気する。

以上、代表的な対応策を列記しましたが、これらはすべて木造軸組工法を前提としています。

ツーバイフォー工法は構造用合板を耐力壁として使用することが前提となっているため、壁体内結露の発生リスクはかなり高く危険です。鉄骨構造は鉄自体の熱伝導率が木材のおよそ800倍もありますから、もし鉄骨が屋外のベランダ部と屋内構造部とで一体となっていれば、激しく結露する可能性がありとても危険です。鉄骨構造では、内外部の鉄骨自体を確実に外断熱するしか外に、結露発生リスクを押さえることは出来ません。

ツーバイフォー、鉄骨造ともにたくさんの長所を持っていますが、こと結露に関して言えば、両方とも失格と断定しても良いと考えます。(これは一般論で、特別な装置や、特別な断熱を施せば、それは話は別です。しかし、現在私の知るところそのような住宅はまだ市場に出ておりません)

皆さんは携帯電話やスマートフォンの中に、調湿能力の高いシートが組み込まれているのをご存知でしょうか。これらの中にも水蒸気は易々と侵入し、結露を発生させ、機械を壊してしまうのです。だから、調湿シートを挿入し、これを防ぐのです。水蒸気をなめてはいけません。かっては、その力によって機関車を走らせていたのです。ものすごい力があります。どんなところにも侵入します。そして、結露を引き起こします。どんなに素敵なお家を建てても、腐ってしまっては元も子もありません。日本は地震大国です。いつ大地震がやってくるかわかりません。いかに耐震や制震を施しても、肝心の躯体そのものが腐っていては、何の強度も発揮しません。結露を徹底的に意識し、そして排除していきましょう。

2012年9月
文責 脇長敬治

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