気密

その1~気密と断熱~

前回までに熱の伝わり方と水蒸気の恐ろしさ(結露)を学びました。今回は気密のことを少し書きます。皆さんは太い毛糸で編んだセーターをもっていますか?冬、そのセーターを着て外に出ます。セーターの下は、長袖ポロシャツ、その下に下着の長袖シャツです。外気温度は1月の平均気温4℃です。風が少し出てきました。どうでしょうか?温かいですか?私は寒くて仕方ありません。そこで、安物の1枚980円のウィンドブレーカーをセーターの上から着ました。すぐに暖かくなりました。980円のウィンドブレーカーは薄っぺらのペラペラです。これにはセーターやポロシャツのような断熱性能はありません。ただ風を通さないというだけです。実は家における気密とは、このウィンドブレーカーのようなものなのです。いかに断熱材を重ねようとも、気密性能が悪ければ、決して暖かくはなりません。

気密と断熱は一体として考えるべきものです。
それでも、読者の皆さんの中には、こう考える人もいらっしゃるのではないでしょうか。

「気密を高めれば、なにか窒息しそうだし、風通しが悪くて、夏にはかえって暑くなるのでは?」と。窒息死するか、良い空気を吸って長生きするかの議論は翌月にします。今月は夏、暑くなるのではという不安について述べます。一般に高気密・高断熱の家は「エアコンが良く効きますよ」と言われます。たしかにその通りです。でも空調しなければ住めない家なんてなんか嫌だなあと思われるかも。私もそうです。真夏に3日間、ずっとエアコンの中にいましたら、全身のけだるさと、吐き気に襲われる、いわゆるクーラー病になった経験があります。妻もクーラーが大嫌いです。以下は南雄三先生著「断熱・気密のすべて」よりの抜粋です。読んでみて下さい。

“————–人間は恒温動物で一定の体温を維持しなければなりませんが、外気温は大きく波打って、冬には体温よりずっと低温に、夏にはずっと高温になります。この様子を図にしてみました。

気密のグラフ

真ん中にある帯(グレー部分)が人間が保たなければならない温度(快適温度)です。帯の幅は個人差や我慢できる範囲を示します。冬は寒さに慣れてきて少し低くなっていますが、夏はその逆で少し高くなっています。それでも外気温との差は大きすぎます。冬は裸のまま放置されれば死に至ります。

外気温は大きく波打っていますが、この波を快適温度に近づけるのが建築的手法です。難しい言葉になってしましましたが、要するに断熱・気密ということです。断熱・気密することで波は和らぎ、快適温度に近づいてきます。でもまだ少し快適温度まで届きません。この不足分を補うのが機械的手法です。つまり空調のことです。—–中略—-外気温の影響をまず断熱・気密が和らげますが、それでも足りなければ空調の出番です。もし、断熱・気密だけで済むのであれば空調は不要です。—————–“

 そもそも高気密住宅だからといっても窓を開ければ、その瞬間に気密ではなくなるのです。だからもし、窓を開けることによる通風(対流による熱移動が得られる)だけで、夏に快適さを得られたら、こんなにいいことはないと思います。それを最も実現しやすいのが高気密・高断熱なのです。なぜなら、夏の熱は窓から約65%、その他の部位から35%入ってきます。その他の部位とは、屋根、壁、床、換気のことです。特に屋根と壁から約30%も入ってきます。これを高断熱仕様にすることによって、半分以下から5分の1までに抑えることが可能となるのです。そうすることで当然、室内温度は高断熱でない家よりはるかに低くなるのです。また、最悪エアコン冷房するときでも、隙間だらけの家では外から確実に熱い空気がどんどんと侵入します。(クーラーで冷やすと室温は当然、外気温度より下がりますから、熱移動の原則で、熱は高いところから低いところへ移動します)これを専門用語で冷房負荷が大きいという表現をします。簡単に言えば冷房の効きが悪く、電気をたくさん消費するといことです。気密にすることによって反対に冷房負荷は小さくなります。

クーラー嫌いの方は高断熱・高気密にし、風通しの良い間取を考えるのも一手ですね。でも風通しを良くすることと、窓を大きくたくさんとることとは別物と考えて下さいね。また窓を大きくとるということは熱が入りやすく、逃げやすくなるということです。単純に快適温度だけを求めるのであれば、窓は小さければ小さいほど可能性は上がります。ただし暗くなります。

絶対に冷房は嫌という方には、私が勧める外断熱内気循環工法を採用し、エアコンを小屋裏に設置し作動させれば、エアコンの冷気に触れることなく、快適な涼しさを得られます。詳しくは別の機会に書きますが、どちらにしても、気密がなければこのようなことも実現できません。気密ってとっても大切なんですよ。次回は人間にとって最も大切な空気と気密の関係を書きます。

その2~快適空気の取り入れ~

一般的な4人家族が発生させる水蒸気量は1日で8ℓ~12ℓあると以前に記しました。今度はCO2です。人間が呼吸にともない吐き出すCO2の量は1時間に就寝中で13ℓ、生活中で20ℓです。快適空気を保つためにはCO2濃度を1000ppmに保つ必要があります。そのために必要な換気量の計算式は省きますが、結論として就寝時に20㎥/時、生活時に30㎥/時です。6畳の部屋は約10㎡で天井高は2.5m、気積は10㎡×2.5m=25㎥となります。6畳の部屋で一人が勉強していると、1時間に付、30㎥の新鮮空気が必要です。日本の今の法律では1時間に0.5回以上空気を入れ替えなさいとなっています。つまり2時間以内で全部入れ替えなさいということです。6畳の部屋で一人勉強していると、2時間で60㎥の空気を入れ替えないと、CO2濃度は1000ppm以下に保てません。1時間で0.5回ということは1時間で12.5㎥、2時間で25㎥しか入れ替わらないということです。これが就寝時の場合でも6畳に一人で寝る時には、1時間で20㎥入れ替えないと、1000ppmを超えます。20㎥÷25㎥=0.8回 つまり1時間に0.8回入れ替える必要があります。私は6畳に妻と二人で寝ていますから、40㎥/時必要です。そのためには40㎥÷25㎥=1.6回 すなわち1時間に1.6回入れ替えなければ1000ppmを超えます。換気装置のない部屋ですが、冬は締めきっていますから、CO2測定器をおいてみれば、朝は2000ppmくらいになっています。1時間に0.5回の入替では、実際には快適空気は得られません。国の偉い人もそれは分かっていると思うのです。6畳の部屋で、冬に外気と1.6回/時も入れ替えれば当然ですが少し寒くなります。結果、省エネとは反対に、多くのエネルギーを消費することになるのです。

今までの話は、一つの部屋だけをとって書きましたが、家全体の話をすれば、そんなに矛盾はありません。延床40坪の家の体積は、40坪×3.3㎡×天井高2.5m=330㎥です。330㎥×0.5回=165㎥すなわち1時間あたり165㎥の新鮮空気を、部屋だけでなく廊下もホールも納戸にも供給するのです。そして、寝室のCO2濃度が高まるときは、廊下やホールから新鮮空気を寝室に取り入れるのです。扉を開けてもOKですが、扉を開けるのが嫌なら、1時間当たり30㎥相当の換気量を持つ小口径パイプファンを居室と廊下の間に設置すれば、問題は簡単に解決できます。ただし、条件が一つだけあります。この家の気温がどこでも同じか、又は大差ないということです。そういう意味でも断熱、気密性能の高いものが当然、良いということになります。

2012年11月
文責 脇長敬治